最強国家ニッポンの設計図

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 『最強国家ニッポンの設計図』(大前 研一、小学館)をよみました。


 大前氏は、保守系の出版社からの出版が多いですし、保守系の雑誌への投稿も多いので、そっち系の方と思っている方もいるかもしれません。

 でも、じっくりよんでみると、そうでもない。

 要は、ファイナンスを中心に事象をとらえている。なおかつ、自身の留学経験からみた国家観・世界観をえがいている。

 ファイナンスを少しでも勉強すれば、いまの日本が、どうしたって一度は小さな政府に向かわなければいけないのがわかります。その小さな政府が、「弱者斬り捨て」になるかどうかは、その後の政策と理念によるものであって、「小さな政府」論だからといって反社会民主主義で、新自由主義なものの見方である、とは絶対にいえない。ここのところを感情論で、まったく噛み合わない議論がなされがち。

 ギデンズの「第三の道」も、縮小せざるをえない福祉国家を前提に議論がなされている。政府部門の縮小が、かならずしも福祉の切り崩しであるとはいいきれない。

 大前さんのように、一度でも留学を経験したひとは、国家というものを強く意識していますよね。短期の留学しかないわたしですらそうです・・・。それだけをみると、藤原正彦のような保守を思い浮かべますが、大前さんはアジア連邦やリージョナリズム(地域主義・分権主義)の考え方も備えています。そういった点でも一概に保守派ともいえないのではないかと。ひとによっては、支離滅裂の「政治学」オンチとみるかもしれませんね。

 論文ではなく、一般書なので、論究については不足はあるものの、切り口はいつもながらに面白いと思います。

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このページは、Masahiro Ohkuboが2009年7月27日 01:59に書いたブログ記事です。

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