出版社を辞めてしばらくは、本屋に入るたびに涙がポロっとでてきて。「もう、本作れないのかな・・・」としんみりした。本屋の軒先で本を手に取る人を眺めて、ちょっぴり編集者であることを誇らしく思ったこともあったっけ。絵本を手にとって笑顔があふれている女性をみて、とても満たされる思いがした。両手で絵本や教科書を抱えているちびっこたち・・・。
そういえば、教壇を降りたときもそうでした。次の仕事では教育現場を訪ねることもしばしばだったので、子供をみるたびに涙がいっぱいこみあげてきたものでした。教室に響く子供たちの甲高い声。教え始めた頃は、耳が痛くて仕方がなかったのに。次第に慣れて心地よい音に。わたしの心をやすらぎに導いてくれる音になりました。
・・今日はなんだか突然、こどもたちのことを思い出して、涙がいっぱいになりました。みんなの声が耳や胸や体のなかをこだまして、ひびきわたりました。あんな顔やこんな顔、怒ったり笑ったり、いろんな表情や姿がよぎりました。わたしにいっぱい愛情を注いでくれて、わたしを育ててくれた子供たち。
わたしもがんばるから、みんなもがんばろうね。
・・・こんどのしごとがどんなしごとでも、胸に思いや願いがいっぱいになるようにがんばりたい。
あ!そうそう。灰谷健次郎の『わたしの出会った子どもたち』(角川書店)を思い出しました。とてもいいので読んでみてくださいね。彼の教師時代に出会った子供たちを綴ったものです。「どんな時も、子どもたちが自分を支え、育んでくれた―。」これは彼の言葉ですが、わたしも同じ。まっすぐにぶつかってきて、けんかしたり泣いたり笑ったり。そんななかで自分の足りないものを補ってくれた。
「教師はバカだ」とか「教師は世間知らずだ」と後ろ指をさすひとは多い。でも、こんなに人を愛し続けられるしごとが他にあるだろうか。
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