三浦綾子「氷点」

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 三浦綾子の「氷点」を読みました。

「・・・あざやかな焔(ほのお)の色を見つめながら、陽子は、いまこそ人間の罪を真にゆるし得る神のあることを思った。神の子の聖なる生命でしか、罪はあがない得ないものであると、順子から聞いていたことが、いまは素直に信じられた。この非情な自分をゆるし、だまって受けいれてくれる方がいる。なぜ、そのことがいままで信じられなかったのか、陽子は不思議だった。

 焔の色が、次第にあせて行った。陽子は静かに頭を垂れた。どのように祈るべきか、言葉を知らなかった。陽子はただ、一切をゆるして欲しいと思いつづけていた。」

 陽子は、流氷が焔のように赤く染まる光景を目前にして、これまでの生涯を振り返りながら、人間を超えた大いなる者の意志を実感する。この聖なる存在こそが、全ての人間が生まれながらにもちうる罪を、許すことができると気づく。全編を通して貫かれる「人間の罪」とそれを唯一「ゆるす」ことのできる大いなるものの存在。

 「一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである」、愛とは得るべきものではなく、与えるものである。たとえ手や足が失われようと、それが愛する者のためであるのなら、失われた手や足は彼の死後もなお、真の意味で生き続ける。愛とは、愛する者にその身を捧げることである、という。

 二人の男の間で揺れながらも、陽子は最後に結論を出す。


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このページは、Masahiro Ohkuboが2007年9月23日 16:34に書いたブログ記事です。

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