序章
研究動機
「この解法はうまくて間違いがないように見えるけれども、どうしたらそれを思いつくことができるだろうか。この実験はうまくて事実を示すように思われるが、どうしたらそれが発見できたであろうか。どうしたら私は自分でそれを思いついたり発見したりできるであろうか」
これは、G.ポリア著『いかにして問題を解くか』[i]のはしがきの一節である。
筆者は浪人時代に秋山仁という予備校講師(現 東海大 東海大学教育研究所)に数学では随分影響された。彼の著作『発見的教授法による数学シリーズ』[ii]は、まさにストラテジーを詳細に分け、受験に即するよう適用したものだった。しかしながら、自分にはなかなかそのストラテジーをものにできず、いわゆる難問といわれるものは解けるようにはならなかった。
それでも、「対称性を活かす」「命題と論理」「場合分け」「2つ以上の動きがあるときは、片方を一時止めて考える」・・・などといった数学に必要な、それでいて教科書には書かれていない知識を得ることができた。公式を理解することだけでなく、もっと高い視野から問題を見下ろすことを知り、数学が楽しくなったのを憶えている。
筆者はいまだに、数学に対して相当な苦手意識を持っている。初めてみるような問題に直面すると「歯が立ちそうにない」と挫けてしまいそうになる。自分を慰めながら、励ましながら、なんとか筆を取る。投げ出してしまうこともあるし、自分なりの解決を導いて達成感に清々しくなることもある。
「どうしたら問題は解けるのだろうか」「もっとうまい方法はないだろうか」「どんな問題にも対抗できる力や考え方はないだろうか」・・・
そのような「あらゆる問題に通じる一般性のある(問題解決の)方法」について考えると同時に、また、どうしてストラテジーをうまく使うことができなかったのか、振り返ってみることにする。
研究の内容
『いかにして問題を解くか』をはじめとするポリアの著作は、こうした立場に立って書かれ、以後の問題解決ストラテジー研究に大きな影響を及ぼした。彼の「発見学」の立場に立って、問題解決ストラテジーの指導について、先行研究などをまじえながら考察していくことにする。
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発見的方法に基づく問題解決方略の指導に関する一考察
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目次
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序章
研究動機
研究の内容
第一章 問題解決と発見的方法
第一節 問題解決の位置づけと必要性
1-1-1 NCTMスタンダードから
1-1-2 我が国における問題解決
(1)変遷 (2)学習指導要領における問題解決の取り扱い
第二節 問題解決と発見的方法
1-2-1 問題解決と問題 (1)問題 (2)問題解決
1-2-2 発見法
(1) 発見的方法
(2) ヒューリスティクス(発見法)とアルゴリズム
(3) 発見法とストラテジー
第二章 問題解決方略に関する先行研究
第一節 問題解決方略
2-1-1 問題解決方略
(1)定義 (2)二つのタイプ (3)数学的考え方との関連
2-1-2 スキーマとストラテジー
(1) 問題解決スキーマ (2)スキーマとストラテジー
(3) ストラテジー指導のアルゴリズム化 (4)ストラテジーとスキーマの補完関係
第二節 問題解決方略指導に関する先行研究
2-2-1ストラテジーの発見学習と有意味受容学習
(1) 発見学習と有意味受容学習 (2) 横山正夫氏の研究事例
2-2-2 問題解決方略の使用過程に関する上位下位分析
第三章 スキーマ形成とストラテジーの転移
第一節 幾何学的表示によるスキーマ形成の考察
3-1-1 三角形の面積を2等分せよ~その1
(1) 未知のものは何か
(2) 解答の進行の幾何学的表示
(3) 本例に見られる「ポリアの発見的方法」とメタ認知的活動
3-1-2 三角形の面積を2等分せよ~その2
3-1-3 三角形の面積を2等分せよ~一般化へむけて
3-1-4 発展的な考え方
第二節 スキーマとストラテジーの幾何学的モデル
3-2-1 スキーマとストラテジーの幾何学的表示
3-2-2 考察
第四章 発見的方法に基づく問題解決方略の指導
第一節 発見的指導の重要性
4-1-1ストラテジーのアルゴリズム化
4-1-2 発見的な方略指導の重要性
第二節 数学的な考え方と問題解決方略の指導
4-2-1 問題から問題へ
4-2-2 what-if-notの視点
終章
まとめと今後の課題
参考・引用文献
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