『市場検察』(村山 治 著、文芸春秋 刊)を読みました。
近年の市場化・グローバル化の流れにもとづき、わが国の社会システムや司法制度も大きく変化を求められてきました。このような変化をうけて、事前規制型の官僚中心主義システムから、事後チェック・一罰百戒の市場中心型の司法システムへの転換がなされてきました。本書ではこのような司法システムの構造転換のなかで、検察の役割がどのように変化してきたかを記しています。
日米構造協議を起点に、埼玉土曜会事件、二信組破綻処理、大蔵汚職事件、KSD事件、日歯連事件、自民党の迂回献金、ライブドア・村上ファンド事件へとひも解いていきます。
これまで日本の検察で避けられてきたとされる、「司法取引」についても、徐々にその考え方が変化してきました。実際には多くの司法取引がなされてきていたし、公取法でもリーニエンシー制度が導入されるなど、表立って制度化がなされるようになってきました。
このような社会システムの変化の背後で、検察界の有力者・実力者たちがいかに動いてきたか。どれだけの影響力を放ってきたのかが、本書を読むとよくわかります。
新聞記者特有の文体に好き嫌いが分かれるかもしれませんが、そこを乗り切れれば楽しめる一冊だと思います。