医療制度改革について論じよ

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保健・健康政策研究 レポート

 

テーマ:「医療制度改革について論じよ」

 

 

●現在の医療制度をめぐる状況

 現在の国民医療費は、下図に示す通り、年々増加を示しており、とくに老人医療費の伸びが著しい。国民医療費の伸び率は、 国民所得の伸び率を上回っている。平成13年以降においては、高齢者医療1割負担の徹底、被用者本人3割負担への引き上げなどの要因により、 ややその伸びも抑えられてきている。しかしながら、今後の高齢化を考慮にいれると、ますますの老人医療費の伸びが予想される。

 ●医療構造改革試案について
●医療費の抑制と保険財政の健全化にむけて
●その他の課題について

保健・健康政策研究 レポート

 

テーマ:「医療制度改革について論じよ」

 

 

●現在の医療制度をめぐる状況

 現在の国民医療費は、下図に示す通り、年々増加を示しており、とくに老人医療費の伸びが著しい。国民医療費の伸び率は、 国民所得の伸び率を上回っている。平成13年以降においては、高齢者医療1割負担の徹底、被用者本人3割負担への引き上げなどの要因により、 ややその伸びも抑えられてきている。しかしながら、今後の高齢化を考慮にいれると、ますますの老人医療費の伸びが予想される。

 

 

 

 

 

厚生労働省の見通しによれば、現行制度のままを維持すれば、医療給付費は、平成18年度には28.3兆円、平成27年度には40兆円、 平成37年度には56兆円にのぼるといわれている。

 

 

 

 

 

出典:「医療制度構造改革試案」厚生労働省

 

 

 

 

 一方で、医療保険財政も厳しいものとなっている。平成11年度の決算では、政府管掌健康保険が約3000億円、 組合健康保険が約2000億円、国民健康保険が約3000億円の赤字額となっている。これらは、現在の厳しい経済状況の下、 保険料収入の減少と、老人医療費の増大傾向によるものと考えられる。

 

 これまで述べてきたように、医療費の伸びの抑制が、医療政策において喫急の課題となっている。

 

●医療構造改革試案について

平成171026日、 厚生労働省中央社会保険医療協議会総会(第72回)にて「医療制度構造改革試案」が提案された。このなかで、 医療費の伸びの抑制策として、中長期および、短期的対策があげられている。中長期的対策として、(1)生活習慣病の予防の徹底、 (2)平均在院日数の短縮。短期的政策として、(1)公的医療保険の給付範囲の見直し、(2)診療報酬の適正化、 があげられている。

 

 公的保険給付の見直しでは、65歳~74歳の患者負担を平成20年度より2割の低率負担とする案や、 70歳以降もすべて2割負担の案なども出されている。前期(65~74歳)後期(75歳以上)の高齢者を区分し、 負担額を分ける案がいくつか出されているが、年金受給を控えた退職高齢者に過度の負担にならないように配慮しつつも、「病院のサロン化」 と揶揄される状況は打破したい。

 

 

 

●医療費の抑制と保険財政の健全化にむけて

 

 前述の中央社会保険医療協議会総会での長期目標の水準では、厚生労働省と経済財政諮問会議の民間議員案では、意見の隔たりがある。 2006年度の医療給付費は28兆円強 (国民所得費7.3% )。このまま増え続ければ2025年に56兆円のぼると見られている。 しかし、厚生労働省が示した対策で49兆円に抑えられるということである。

 

 

 

 

 

医療費適正化の中長期的方策及び短期的方策による効果額

出典:「医療制度構造改革試案」厚生労働省

 

 

 

 

 諮問会議側はさらに少なく、42兆円に抑えることを求めている。

 

 

 

 技術革新の加速などを考えつつも、どの程度の負担なら国民に無理がないのか、年金や税負担の妥協点を探る必要がある。

 このようななか、必ず議題にのぼるのは、診療報酬の見直しである。検査、診療、投薬など医療行為の体系のなかで、 積極的に医療の効率化に取り組んでいく必要がある。とくに検査・診察・投薬を個別に報酬額が決まっている仕組みによって、検査漬け・ 薬漬けの温床を生んでいるとの指摘がある。したがって、病気の種類ごとに治療の難易度による定額制にすれば、その額のなかでコストを節約し、 個々の医師の報酬を多くできる仕組みにできるとの提案もある。

 

●その他の課題について

 日々、高度に発展し続ける医療技術に対応するために、混合診療の導入が叫ばれている。高度の先進医療へのいち早い対応のためにも、 導入が検討されるべきではあるが、私的医療の拡大により皆保険制度が崩れかねないとの懸念の声も多い。また、 これらが医療費抑制のために高度技術を私的保険化してしまう動きがあればさらに危険だろう。解禁する範囲や規制などをうまく組み合わせて、 個人の自由と、医療の平等のバランスを保っていきたいものである。

 また、3時間待って3分診療と揶揄される公的病院の体制について、プライマリーケアの医療制度を整える必要がある。 レセプトの電子化やカルテの開示など、事務処理の効率性と透明性を高める努力も当然必要になるだろう。

 

 

 

■参考文献・資料

「医療制度構造改革試案」厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会 (第72回)資料

http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/tp1019-1.html

 

「医療制度改革の課題と視点」厚生労働省 高齢者医療制度等改革推進本部事務局

http://www.mhlw.go.jp/houdou/0103/h0306-1/h0306-1.html

 

日本経済新聞20051128日社説 「医療改革、効率化へもう一歩踏み込め」

 

日本経済新聞20051126日 「改革もう一押し05年体制への試金石 第4回 医療制度― ―中長期にらみ「脱・既得権」」

 

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このブログ記事について

このページは、Masahiro Ohkuboが2006年1月31日 23:06に書いたブログ記事です。

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