私は現在、自治基本条例について調査・研究しています。
しかしながら、自治体によって呼び名もさまざまなので、どのようにまとめていくか
頭を悩ませています・・・。とりあえず入門編としてまとめてみました。
以下のものは、自治の条例と自治基本条例について、
松下啓一著
『協働する社会をつくる条例』ぎょうせい、2004年
をまとめなおしたものです。独自の論文ではないので、ご注意ください。
■自治の新しい条例
・「積極的に市民の権利を創造し、市民やNPOと協働して新たな社会を構築していく」 視点
・まちづくり、環境保全、情報公開、市民文化、政治倫理、市民参加・ 協働などさまざま
・自治と市民との関係を問い直した条例に限ってみると、自治基本条例、市民参加条例、 市民協働支援条例などがある。
●自治基本条例
自治に関する基本的な事項を定めた条例。自治の理念、基本的な制度・権利などを内容とする。
「自治体の憲法」であるともいわれる。自治基本条例という名称をもつもの(杉並区自治基本条例) とまちづくり基本条例という名称のもの(ニセコ町まちづくり基本条例)がある。現時点では後者の名称が多い。
◆自治に関する基本事項とは何かについては、共通理解が得られていないため、明確な基準がない。
◆このような網羅的・体系的な条例が果たして今の段階で必要かどうか。 実際にこうした条例をつくることができるのかなど、議論すべき点は多い。
◇ニセコ町まちづくり基本条例がプロトタイプとなって、全国で自治基本条例づくりが試みられている。
●市民参加条例
政策決定、実施、評価に市民が参加するという視点から、自治と市民の関係を再構築しようとする条例。 市民参加とは、「市の施策を立案し、及び決定する意思形成過程から評価の段階に至るまで、市民が多様な形で参加すること」 (宝塚市市民参加条例第2条)とされている。
・市民参加の大綱を定めた条例 箕面市市民参加条例、宝塚市、 猿払村など
・多様な市民参加手続きを保証するとともに、 従来ならば規則等で規定される事項を条例で規定しているもの
石狩市の市民参加条例(行政活動への市民参加の推進に関する条例)、旭川市、西東京市、 鹿児島市など
◆男女共同参画社会基本法の制定(99年6月) などを契機に、参加と参画が区別されて使われるようになる。参加は仲間に加わること、参画は企画や決定の段階から積極的・ 主体的に参加し、その意見を反映させていくこととされている。(実際には、参加も参画も同義で使われている)
●市民協働支援条例
自治体と市民・NPOとの協働や、 支援を総合的にとらえている条例
(個別の協働・支援施策を対象とする条例も多くみられるが、ここでは絞っている)
・理念型条例 都道府県の市民協働支援条例は、総じて理念的、網羅的。県の役割や、 NPOとの距離の遠さのせいもある。
・具体的な施策や仕組みを盛り込もうと模索している条例
市区町村の市民協働支援条例には、この種の条例が多い。
■自治の新しい条例が生まれてきた背景・理由
①地方分権
②地方自治法等の既存法の不足
③システム化の必要
■自治基本条例とは何か
「自治基本条例は、自治に関する基本的な事項を定めた条例といえるが、法律上の概念ではなく、また共通の理解もできていないため、 何をもって自治基本条例とするかについての確立した定義はない。」(松下2004)
① 住民による自治体行政、 議会の役割そして住民自身の責務と権利の定義
② その自治体の地方自治(住民自治、団体自治)の基本的なあり方について規定し、かつ、 その自治体における自治体法の体系の頂点に位置づけられる条例
自治基本条例=自治の基本を定めたもの とすると以下のものが要件になる。
(完全型(フルセット型)としての自治基本条例)
① 自治の基本理念やビジョンを示していること
② 自治の実現にとって重要な市民の権利や責務を規定していること
③ 自治(まち)をつくるための制度や仕組みが規定されていること
④ 行政・議会の組織・運営・ 活動に関する基本的事項を定めていること
⑤ 自治体の最高規範として、他の条例や計画などの立法指針、 解釈指針となっていること
⑥ 以上のことが形式として規定されているだけでなく、 実体的にも機能していること
■自治基本条例の類型化
●自治基本型・まちづくり基本型
・自治基本型
・まちづくり基本型 ・自治基本条例系
・政策テーマ系
●フルセット型・サブセット型
フルセット型=①理念+②市民の権利+③自治実現の制度・仕組み+④行政・議会の組織・運営・ 活動に関する基本的事項+⑤最高法規の5点セット
・フルセット型 杉並区自治基本条例、兵庫県生野町まちづくり基本条例、 吉川町まちづくり基本条例など
・サブセット型 ・理念条例 理念条項のみ
・準自治基本条例 対象から議会が除かれている
・行政基本条例 行政運営に関する事項のみ規定、 市民側の権利についての規定なし ニセコ町まちづくり基本条例
●理念原理型・具体的規定型
・ 理念原則型 自治の基本理念や政策分野ごとのまちづくりの方向性が規定されている条例
箕面市まちづくり理念条例
・具体的規定型 具体的な権利や制度・ 仕組みも規定されている条例
ニセコ町まちづくり基本条例
●自治基本型・まちづくり基本型
・自治基本型
・まちづくり基本型 ・自治基本条例系 自治基本条例の5要件を全部もしくは、 一部満たしている条例
・政策テーマ系 条例の中心が、政策テーマごとに、 まちづくりを進めるにあたっての基本的方向とその実現に向けた自治体や市民の役割・責務等 箕面市まちづくり理念条例、 猿払村まちづくり理念条例、厚木市まちづくり理念条例
■全国の自治基本条例
・基本条例の名のつくもの 杉並区自治基本条例、 多摩市自治基本条例
・まちづくり条例という名称の条例は、数えられないくらいある。
道路、公園、建物といったハードから、文化、環境、 景観など幅広い概念
◆自治基本条例と自治基本条例系のまちづくり基本条例に絞って検討すべきか。
◇志木市市政運営基本条例 全5条のきわめて簡単な条例
この条例にもとづいて、市民による「第二の市役所」といった思い切った市政運営が行われている。ただし、 この条例は、自治基本条例としての要件をほとんど満たさない。
このような簡単な条例を根拠にして、自治の根幹にふれるさまざまな試みが行われていることは、 自治基本条例を考えるうえでの重要な問題提起をしているのではないか。
名称 |
制定年月日 |
自治の基本理念等を示している |
自治の実現に重要な市民の権利 |
自治をつくるための制度やしくみ |
自治体の組織運営活動の基本事項 |
最高規範としての立法・解釈指針 |
ニセコ町まちづくり基本条例 |
2000年12月 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
杉並区自治基本条例 |
2002年12月 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
箕面市まちづくり理念条例 |
1997年3月 |
○ |
- |
- |
- |
- |
多摩市市民自治基本条例案提言書案 |
2002年6月 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
厚木市まちづくり理念条例 |
2003年3月 |
○ |
- |
- |
- |
- |
志木市市政運営条例 |
2001年9月 |
○ |
- |
○ |
- |
- |
多摩市市民自治基本条例案は、「多摩市自治基本条例」として、平成16年8月1日に制定
■志木市市政運営基本条例 http://www.city.shiki.saitama.jp/html/topics/shikishiminiinkai.html
(目的)
第1条 この条例は、市政運営に関する基本的事項を定めることにより、市民主体の自治の実現を図ることを目的とする。
(基本理念)
第2条 まちづくりは、市民自らが主体となって考え、行動し、市民及び市が協働して推進することを基本理念とする。
(まちづくり活動の支援)
第3条 市は、基本理念に基づき、市民主体のまちづくりについて意識の高揚を図るとともに、市民によるまちづくり活動を支援するものとする。
(情報の共有)
第4条 市は、市民が参画する市政を推進するため、情報公開制度及び個人情報保護制度を踏まえ、市政に関する情報を分かりやすく提供し、 市民との情報の共有化に努めるものとする。
(市民参画)
第5条 市は、市政運営に市民の意見を積極的に反映するよう、市民の市政への参画のために必要な措置を講ずるものとする。
附 則
この条例は、平成13年10月1日から施行する。
■読みやすさから組み立てなおしたらどうか(松下啓一)
背景・目的→目的達成のための理念→
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