健康増進政策についてのメモ

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●「健康日本21」ホームページ
http://www.kenkounippon21.gr.jp/
 健康増進法をはじめとする健康増進政策の数々。国、都道府県、市町村、市民、NPOなど
多様な主体による健康増進運動を進めています。「健康づくり運動からのまちづくり」市町村レベル
の取り組みでは面白いものも見られます。

●厚生労働省HP「健康分野の情報」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/index.html

●我が国の健康課題と健康施策をめぐる状況
 我が国の平均寿命は先進諸国でも戦後最下位であったのが、昭和59年(1984年)から世界一となっている。とくに下の表のように、女性の平均寿命は2位との差がますます開きつつあり、我が国の健康水準の高さを物語っている。

 このように日本人の寿命が延びた背景には、感染症などの急性疾患が減少したことがあげられる。一方で、がんや循環器病などの生活習慣病が増加し、疾病構造が大きく変わってきている。これらの生活習慣病を予防・治療するにあたっては、個人が積極的に健康を増進していくことが必要になってくる。

 急速な出生率の低下もともない、20年後の平成32年(2020年)には4人に1人が、50年後の平成62年(2050年)には3人に1人が老人という超高齢社会になるといわれている。今世紀の日本は、生活習慣病をはじめとする長寿化による疾病や、高齢者の介護の負担はますます増加し、これらの社会的負担を軽減することが大きな課題となっている。個人の健康を向上・増進することが、ますます重要となってきているのである。


●「健康日本21」の推進と健康増進法の成立
 平成12年3月31日、厚生省事務次官通知等により、「健康日本21」が開始される。国民健康づくりと疾病予防のための運動として、環境整備が進められている。平成13年11月29日には、政府・与党社会保障協議会において、「医療制度改革大綱」が策定、このなかで「健康寿命の延伸・生活の質の向上を実現するため、健康づくりや疾病予防を積極的に推進する。そのため、早急に法的基盤を含め環境整備を進める。」と述べられている。
 これを受けて政府は、平成14年3月1日に第154回通常国会に健康増進法案を提出、6月21日に衆議院で可決、7月26日に参議院で可決され成立。8月2日に公布された。

●施策についての概観
 健康増進法の基本方針は、「健康日本21」の法制化である。(1)国は、国民の健康の増進に関する基本的方向、目標の設定、達成度の評価など、基本方針を策定する(2)都道府県健康増進計画および市町村の健康増進計画の策定に関する事項を定め(3)食生活、運動、身体活動、休養、歯の健康等の指針の策定や、栄養成分、たばこ、飲酒などに関する情報提供を推進する(4)生涯を通じた保健事業の一体的推進を行う。
 これらは、母子保健、学校保健、産業保健、老人保健などの健康診査事業を一体的に推進するものである。健康手帳の様式を標準化し、喫煙・飲酒、病気・怪我の既往歴、アレルギーなども記入されていると医療の場でも役立つことがあるだろう。当然のことながら、個人情報として取り扱いに注意が必要である。企業からすれば、顧客がどのような薬を必要としているか、保険を欲しがっているかなど、一目で分かってしまう可能性がある。うまく活用すれば、市民にも業者にも有益な橋渡しができるかもしれないが・・。

 健康日本21の基本方針として、
①「一次予防」の重視
②健康づくり支援のための環境整備
③目標等の設定と評価
④多様な実施主体による連携のとれた効果的な運動の推進
これら4つがあげられている。「健康はつくるもの」として、一次予防の防止へ向け、健康づくりを進めていく。そして、国・都道府県・市町村の各実施主体がそれぞれの特色を生かした目標の設定、計画の策定、実施、評価を進めるものとしている。

 「健康日本21 地方計画実施事例集」から、千葉県白井市の例をあげると、計画策定の段階でワークショップを行い、住民同士の意見交換から、各ライフステージや、キーワードごとに整理し、施策の方向を検討している。健康政策に限るのではなく、「まちづくり」に取り入れ、ウォーキングイベントなど、住民が誰でも楽しめるような複合的な企画を進めているようだ。また、「健康文化都市大学」を開催し、その卒業生たちで、「健康文化都市夢ふれ愛サークル」「NPO 法人しろい環境塾」といったサークルやNPOを設立し、まちづくりと健康の増進とをあわせて進めている。
 施策の評価については、住民参加による「健康文化都市事業評価委員会」を組織し、市民アンケートなどを用いながら、意見や評価を取りまとめ、市長に提言を行った。

 このような取り組みが各市町村で行われている。一方で、都道府県や広域圏での取り組みを概観すると、大枠的なものが多く、面白みに欠けるように感じる。市町村と比べると、どうしても住民の距離があるため仕方ないところもあるが、そうであれば、各自治体の住民委員の代表を集めるような形にし、地域の計画との連携をうまくとるべきだろう。人材の育成や情報の提供など、各市町村を繋げたり、支援したりする役割に徹すれば、都道府県の施策の価値もあるように思われる。主導権を取ろうと思わないほうがうまくいくのではないだろうか。

●まとめ
 このような住民参加による多様な主体による計画策定、事業の実施のためには、地域の担い手を育てること、市民性を育てること、そして、NPOや市民活動のアソシエーションが活発になるよう支援していくことである。まだまだ、新しい公共に対する市民の認識は薄い。これらの理解を深めていくことが今後の課題となるだろう。


■参考文献・資料
●厚生労働省「健康日本21」ホームページ
http://www.kenkounippon21.gr.jp/
●神奈川県予防医学協会
http://www.yobouigaku-kanagawa.or.jp/kenkana/415-2.html
●厚生労働省「健康日本21 実践の手引き」
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/jissen/index.html
 同 「健康日本21 地方計画実施事例集」
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/chihou_keikaku/jireisyu/index.html
●鈴木崇弘他編著『シチズン・リテラシー』教育出版2005年
●池上直己,J.C.キャンベル著『日本の医療-統制とバランス感覚-』中公新書1996年

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このブログ記事について

このページは、Masahiro Ohkuboが2005年11月30日 20:21に書いたブログ記事です。

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